年の差政略結婚~お見合い夫婦は滾る愛を感じ合いたい~
「あ……、は……っ」
ようやくキスから解放されたとき、私の呼吸はもう乱れていた。頬が熱いのはアルコールのせいか、恥ずかしいからか、自分でもわからない。
幸景さんは「璃音」と名前を呼びながら頬と鼻先にチュッとキスをすると、最後に首筋に軽く吸いついてから言った。眉尻が微かに下がっている。
「……このままベッドに連れて行きたいところだけど……。言わなきゃいけないことを忘れていた」
「言わなきゃいけないこと?」
少し乱れた私の髪を幸景さんは撫でて整えてから、体を離した。それからテーブルに載せたグラスを再び私の手に持たせて、言葉を続ける。
「来月、父の――会長の誕生パーティーがあるんだ。親族と会社関係者を集めて、都内のホテルで開かれる。璃音、僕の妻としてきみにも出席して欲しいんだけど……いいかい?」
「も……、もちろんです!」
気がつくと私は咄嗟に答えていた。
ホテルでの大規模なパーティーに社長夫人として出席するなんて、正直プレッシャーもあるけれど。でもそれ以上に、幸景さんの妻としての役割が果たせることが嬉しい。
張り切った様子で答えた私に、幸景さんは驚いたように目をしばたたかせた。そしてフフッと小さく笑って目を細めると、子供を褒めるみたいに頭を撫でた。
「頼もしい返事をありがとう。お礼に素晴らしいドレスを買ってあげるからね。ウエディングドレスのときと同じデザイナーにお願いしようか」
やっぱり甘やかされている気もするけれど、私が出席することで彼が喜んでくれるのならば満足だ。
頭を撫でられながら、私は密かに決意する。
パーティーでは幸景さんの妻として、しっかりしたところを見せるんだ、と。そうすれば彼も私を見直して、もっと家のことを任せるようになってくれるかもしれない。
「何色のドレスがいいだろう。璃音には明るい華やかな色が似合うと思うけど。ピンクとかレモン色とか」
「幸景さん。私、和装で出てもいいですか? 和服の方が、母や祖母に習ってるからきちんと動けると思うから……」
本当はピンクのドレスも着たいけれど、それでは子供っぽすぎると思った。ただでさえ彼とは年の差があるんだし、周りの人に子供っぽいと思われたくない。
ちゃんと社長夫人らしい風格を漂わせるためにも、和服の方が適してると考えた。
「璃音が着たいのなら、それでいいよ」
幸景さんは、すぐに賛成してくれた。こういうとき、彼は私の希望を必ず優先してくれる。
「あと、いらっしゃる方のことも予め教えてください。ご挨拶のときに失礼がないようにしなくちゃ」
妻として幸景さんに恥をかかせないようにしなくちゃと、すっかり張り切っている私に、彼は「大丈夫、あとで秘書に資料をまとめておくよう言っておくよ。きみに恥を掻かせるような事態にはしないよ」と頷いた。
なんだか気遣っているのか、気遣われているのか、あべこべだなあと考えていると、持っていたグラスを再び手から抜き取られテーブルに置かれた。
「何も心配しなくていいよ。璃音は好きな服を選んで、楽しむつもりで参加しなさい」
そう言いながら幸景さんは両手で私の頬を包む。手のひらの温かい熱がじわりと頬に伝わって、心地いい。
「だから今はもうパーティーのことは気にしないで……苺味のキスの続きをしようか」
「……ん」
再び始まる、甘い甘い口づけと抱擁。
優しく口内を舐られて、頬と瞼にキスをされ、耳たぶに唇を這わされる。
「幸景さん……、好き……」
乱れた息の合間に想いを告げれば、幸景さんは首筋にひとつ痕を残してから私の体をお姫様抱っこで抱きかかえた。
「ベッドへ行こうか。きみをゆっくり味わうために」
情熱を宿した瞳で微笑まれて、私の顔が熱くなる。
彼に抱かれるのは嬉しいけれど……明日の朝、ちゃんと起きられるように手加減して欲しいなと、コッソリ思った。
ようやくキスから解放されたとき、私の呼吸はもう乱れていた。頬が熱いのはアルコールのせいか、恥ずかしいからか、自分でもわからない。
幸景さんは「璃音」と名前を呼びながら頬と鼻先にチュッとキスをすると、最後に首筋に軽く吸いついてから言った。眉尻が微かに下がっている。
「……このままベッドに連れて行きたいところだけど……。言わなきゃいけないことを忘れていた」
「言わなきゃいけないこと?」
少し乱れた私の髪を幸景さんは撫でて整えてから、体を離した。それからテーブルに載せたグラスを再び私の手に持たせて、言葉を続ける。
「来月、父の――会長の誕生パーティーがあるんだ。親族と会社関係者を集めて、都内のホテルで開かれる。璃音、僕の妻としてきみにも出席して欲しいんだけど……いいかい?」
「も……、もちろんです!」
気がつくと私は咄嗟に答えていた。
ホテルでの大規模なパーティーに社長夫人として出席するなんて、正直プレッシャーもあるけれど。でもそれ以上に、幸景さんの妻としての役割が果たせることが嬉しい。
張り切った様子で答えた私に、幸景さんは驚いたように目をしばたたかせた。そしてフフッと小さく笑って目を細めると、子供を褒めるみたいに頭を撫でた。
「頼もしい返事をありがとう。お礼に素晴らしいドレスを買ってあげるからね。ウエディングドレスのときと同じデザイナーにお願いしようか」
やっぱり甘やかされている気もするけれど、私が出席することで彼が喜んでくれるのならば満足だ。
頭を撫でられながら、私は密かに決意する。
パーティーでは幸景さんの妻として、しっかりしたところを見せるんだ、と。そうすれば彼も私を見直して、もっと家のことを任せるようになってくれるかもしれない。
「何色のドレスがいいだろう。璃音には明るい華やかな色が似合うと思うけど。ピンクとかレモン色とか」
「幸景さん。私、和装で出てもいいですか? 和服の方が、母や祖母に習ってるからきちんと動けると思うから……」
本当はピンクのドレスも着たいけれど、それでは子供っぽすぎると思った。ただでさえ彼とは年の差があるんだし、周りの人に子供っぽいと思われたくない。
ちゃんと社長夫人らしい風格を漂わせるためにも、和服の方が適してると考えた。
「璃音が着たいのなら、それでいいよ」
幸景さんは、すぐに賛成してくれた。こういうとき、彼は私の希望を必ず優先してくれる。
「あと、いらっしゃる方のことも予め教えてください。ご挨拶のときに失礼がないようにしなくちゃ」
妻として幸景さんに恥をかかせないようにしなくちゃと、すっかり張り切っている私に、彼は「大丈夫、あとで秘書に資料をまとめておくよう言っておくよ。きみに恥を掻かせるような事態にはしないよ」と頷いた。
なんだか気遣っているのか、気遣われているのか、あべこべだなあと考えていると、持っていたグラスを再び手から抜き取られテーブルに置かれた。
「何も心配しなくていいよ。璃音は好きな服を選んで、楽しむつもりで参加しなさい」
そう言いながら幸景さんは両手で私の頬を包む。手のひらの温かい熱がじわりと頬に伝わって、心地いい。
「だから今はもうパーティーのことは気にしないで……苺味のキスの続きをしようか」
「……ん」
再び始まる、甘い甘い口づけと抱擁。
優しく口内を舐られて、頬と瞼にキスをされ、耳たぶに唇を這わされる。
「幸景さん……、好き……」
乱れた息の合間に想いを告げれば、幸景さんは首筋にひとつ痕を残してから私の体をお姫様抱っこで抱きかかえた。
「ベッドへ行こうか。きみをゆっくり味わうために」
情熱を宿した瞳で微笑まれて、私の顔が熱くなる。
彼に抱かれるのは嬉しいけれど……明日の朝、ちゃんと起きられるように手加減して欲しいなと、コッソリ思った。