年の差政略結婚~お見合い夫婦は滾る愛を感じ合いたい~
「だ、大丈夫ですから……」
冷静に振舞わなくてはと思い無理やり笑顔を浮かべてそう言うと、社員の人は弁解しようとしたのかさらにとんでもないことを口にした。
「本当に申し訳ございません。あの、その、奥様が大変お若く可愛らしかったものですから、てっきり秘書課の新入社員かと思いまして……」
私はその言葉に盛大なショックを受けた。
こんなに大人っぽい装いで来たのに、こんなに立ち振る舞いに気をつけていたのに。よりによって新入社員と間違えられたなんて……!
私の顔から笑みが消えたのを見て、その言葉が何のフォローにもなっていなかったと悟った年上の社員の人が、若い男性社員の頭をもう一度はたいた。
「申し訳ございません、奥様! こいつには俺から厳しく指導しておきます! 本当に申し訳ございませんでした!」
「大丈夫……、いいですから、叩かないであげて」
騒ぎはますます大きくなってしまい、会場からも顔を覗かせてこちらを見ている人が出てきた。すると。
「璃音? どうした、何があった」
騒ぎの中心に私がいると気づいた幸景さんが、会場から出てきてこちらへやって来た。
「社長……!!」
幸景さんの登場に社員たちの顔が一斉に緊張に引き締まり、私に頭を下げていたふたりの顔がサッと青ざめた。
幸景さんは素早く私の肩を抱くと、「怪我でも?」と心配そうに窺った。そして私が首を横に振ったのを見て、視線を社員に移し「何があった。説明しろ」と厳しい口調で問いかけた。
「じ、実は」
私に誤って声をかけた男性社員がおそるおそる口を開こうとしたとき。
「ゆ、幸景さん! 大丈夫、なんでもないの。ちょっと間違いがあっただけ。会場に戻りましょう。まだご挨拶の済んでいないお客様がいらっしゃるでしょ?」
私は強引に幸景さんの腕を引っ張ってその場を離れた。
「璃音? 待ちなさい、説明を」
「本当に大したことじゃないんです。さ、会場に行きましょう」
これ以上、恥を掻きたくなかった。大勢の前で、ましてや幸景さんの前で。
新入社員と間違えられたなんて、知られたくない。
幸景さんは納得のいかないような顔をしていたけれど、会場に入ってしまうと腕を引っ張っていた私の手を離させ、優しくエスコートの姿勢に戻した。
「わかったから、落ち着いて。何かドリンクは?」
「あ……はい。じゃあ、アルコールの入ってないものを……」
窘められて落ち着きを取り戻した私は、幸景さんが給仕係から受け取ったオレンジジュースをもらって口をつける。
気分が落ち着いたところで再び招待客の方との挨拶や歓談に回ったけれど、〝新入社員〟のショックのせいで自分の立ち振る舞いになんだか自信が持てなくなってしまい、パーティーの後半は上手に笑顔が作れなくなってしまった。
冷静に振舞わなくてはと思い無理やり笑顔を浮かべてそう言うと、社員の人は弁解しようとしたのかさらにとんでもないことを口にした。
「本当に申し訳ございません。あの、その、奥様が大変お若く可愛らしかったものですから、てっきり秘書課の新入社員かと思いまして……」
私はその言葉に盛大なショックを受けた。
こんなに大人っぽい装いで来たのに、こんなに立ち振る舞いに気をつけていたのに。よりによって新入社員と間違えられたなんて……!
私の顔から笑みが消えたのを見て、その言葉が何のフォローにもなっていなかったと悟った年上の社員の人が、若い男性社員の頭をもう一度はたいた。
「申し訳ございません、奥様! こいつには俺から厳しく指導しておきます! 本当に申し訳ございませんでした!」
「大丈夫……、いいですから、叩かないであげて」
騒ぎはますます大きくなってしまい、会場からも顔を覗かせてこちらを見ている人が出てきた。すると。
「璃音? どうした、何があった」
騒ぎの中心に私がいると気づいた幸景さんが、会場から出てきてこちらへやって来た。
「社長……!!」
幸景さんの登場に社員たちの顔が一斉に緊張に引き締まり、私に頭を下げていたふたりの顔がサッと青ざめた。
幸景さんは素早く私の肩を抱くと、「怪我でも?」と心配そうに窺った。そして私が首を横に振ったのを見て、視線を社員に移し「何があった。説明しろ」と厳しい口調で問いかけた。
「じ、実は」
私に誤って声をかけた男性社員がおそるおそる口を開こうとしたとき。
「ゆ、幸景さん! 大丈夫、なんでもないの。ちょっと間違いがあっただけ。会場に戻りましょう。まだご挨拶の済んでいないお客様がいらっしゃるでしょ?」
私は強引に幸景さんの腕を引っ張ってその場を離れた。
「璃音? 待ちなさい、説明を」
「本当に大したことじゃないんです。さ、会場に行きましょう」
これ以上、恥を掻きたくなかった。大勢の前で、ましてや幸景さんの前で。
新入社員と間違えられたなんて、知られたくない。
幸景さんは納得のいかないような顔をしていたけれど、会場に入ってしまうと腕を引っ張っていた私の手を離させ、優しくエスコートの姿勢に戻した。
「わかったから、落ち着いて。何かドリンクは?」
「あ……はい。じゃあ、アルコールの入ってないものを……」
窘められて落ち着きを取り戻した私は、幸景さんが給仕係から受け取ったオレンジジュースをもらって口をつける。
気分が落ち着いたところで再び招待客の方との挨拶や歓談に回ったけれど、〝新入社員〟のショックのせいで自分の立ち振る舞いになんだか自信が持てなくなってしまい、パーティーの後半は上手に笑顔が作れなくなってしまった。