年の差政略結婚~お見合い夫婦は滾る愛を感じ合いたい~
そんな縋るような思いで迎えた翌週。
待望の『白百合蝶子さんと過ごすティータイム』は、ホテルのガーデンテラスを貸しきって開かれた。
テラスはプールで囲まれて涼し気で、屋外と言えど日差しを遮る屋根もついていて心地いい。ほどよく爽やかな風が吹き抜け、まるでリゾート地にいるような気持ちの良い午後。
とても和やかな雰囲気になるはずだったのに――。
「ごめんなさいねえ、こんなお茶しかご用意できなくて。きっとしのやの奥様は舌が肥えてらっしゃるでしょうから、お口に合わないわよねえ」
「いえ……、そんな……」
何がどういうわけか、私は最悪な雰囲気の渦中で白百合蝶子さんにいびられていた。
本当に意味がわからない。会場に入ったときから白百合さんは私にだけ厳しい視線を送ってきて、席に着き自己紹介をすると他の参加者たちまで気まずそうな雰囲気を醸し出してきたのだ。
そしていざお喋りが始まると、私の発言はすべて白百合さんの嫌味で返され、そのたびに場は水を打ったように静まり返った。
「あの……夫にもっとしっかりしたところを見せたいと思っているのですけど、具体的にどうしたらいいのかわからなくて……」
「あら、璃音さんはお若くて可愛らしいんですから、そのままの方がよろしいんじゃなくって? 御主人だって璃音さんのそういうところを気に入ってらっしゃるでしょうに。エステにでも通って若さを維持された方が、ご主人もお喜びになるんじゃありません?」
ニコニコと上品そうな笑みを浮かべながら、白百合さんは薔薇色に塗った唇で辛辣な言葉を吐き出す。
ようは、私には若さしか価値がなく、幸景さんもそれしか求めていないと言いたいらしい。
なんて意地悪なことを言うのだろうと腹が立つと同時に、まったくの見当外れとは言いきれないことに落ち込んでしまう。
幸景さんが私を可愛いという目で見ていることは確かだ。そしてそこには若くて未熟だからという庇護欲もかなりあると思う。
けど、それが私の価値になってほしくない。そんなものは年齢を重ねればどうせ消えてしまううえ、時に彼を不快にさせかねないものなのだから。
だからこそ人間としての魅力を磨こうと数々の講座を渡り歩き、こうして茶話会にまで辿り着いたというのに。その気持ちを根本から否定され馬鹿にされたみたいで、わたしは一秒でも早くこの場から帰りたくなってしまった。
もう何かを話す気力もなくて口を噤んでしまうと、白百合さんは雑談のようなふりをしてさらに私を攻撃してきた。