年の差政略結婚~お見合い夫婦は滾る愛を感じ合いたい~
感激して、ますます涙が溢れそうになったときだった。

「……っ、ひっく!」

「ん?」

「ひっく!」

泣きすぎたせいだろうか。よりによってこんなときにしゃっくりが出てしまい、私は恥ずかしくて顔を真っ赤にした。

「ご、ごめんなさい……ひっく!」

恥ずかしいったらない。せっかく心が通じ合って感動していたのに、まるで台無しだ。
慌てて口を手で押さえるけれど意味はなく、私は肩をピョコンと跳ねさせながら「ひっく!」と繰り返した。

「ぷっ、……あはは、はは。大丈夫かい?」

幸景さんはしゃっくりに翻弄される私を見て目を丸くしていたけれど、やがて弾かれたように笑い出した。そして可愛くて仕方がないといわんばかりに、私の頭をギュッと抱きしめて頬を擦り寄せる。

「わ、笑わないでください。ひっく!」

「はは、ごめん。でもあまりにもきみが可愛くて」

「もう! ひっく!」

笑いを止められないまま私を抱きしめ続けていた幸景さんは、「水を持ってきてあげるから、待ってて」と言って立ち上がりキッチンへと歩いていった。
その後ろ姿が帰宅したときのままスーツ姿だということに気づき、私は慌ててソファーから立ち上がった。

「あ、待ってください。ひっく! お水は自分で取りにいくから、幸景さんは着替えてきてひっく! ください」

帰って早々、くつろぐ間も与えず話し込んでしまったことを反省する。きっとお腹も空いているに違いない。
食卓のスープを温めてくるついでに水を飲んでこようとキッチンへ向かった私を、幸景さんがクスクスと笑いながら見ている。

さっきまでの真面目な雰囲気が台無しだし、格好悪いところを見せてしまったけれど、幸景さんが笑えるほど元気になってくれたことはよかったと、私も笑みが浮かんだ。
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