年の差政略結婚~お見合い夫婦は滾る愛を感じ合いたい~
【2】
【2】
「おはよう、璃音。そろそろ起きようか」
AM七時。春の日差しのように温かな声で起こされた私は、その心地よさに再び夢の世界に行ってしまいそうになる。
けれどもすんでのところでハッと我を取り戻すと、慌てて瞼を開きガバッと体を起こして枕もとのスマホを確認した。
「またアラーム止まってる……! もう、止めないでって言ったじゃないですか!」
一時間前にセットしたはずのアラームがオフになっていることを確認した私は、起き抜けの開口一番、幸景さんを責めてしまった。
すると幸景さんはキョトンと目を丸くした後おかしそうにフフッと笑って、両手で私の頬を挟んだ。
「おはようの前に怒られるとは思わなかったよ。朝から元気がいいね」
そしてむくれている私の唇にチュッと軽いキスをすると、手を離して「顔を洗っておいで、ご飯できてるから。今日は璃音の好きなヨーグルトのベーグルだよ」とご機嫌そうに言って立ち去った。
朝日が明るく差し込む寝室にひとり残された私は、火照った頬を手で押さえながらため息を吐きだす。
今日も幸景さんより先に起きられなかった……という、結婚して以来毎日している反省をしながら。
幸景さんとのお見合いから半年。夢のような交際期間と慌ただしい結婚準備期間を経て、私たちは二週間前に夫婦になった。
形だけだと思っていたお見合いは、どういうわけか幸景さんから結婚前提の交際申し込みという驚きの展開を迎え、私もうちの両親も驚いているうちにあれよあれよと結婚話は進んでいった。
両親も私も、平凡な和菓子屋の娘に大企業の社長夫人が務まるのかと散々心配したが、幸景さんはそのたびに『僕が璃音さんを支えますから、何も心配しないでください』と笑顔で言い張った。
男性との交際を禁止にするほど過保護で過干渉な父は、当然この結婚話にも渋い顔をしたけれど、結局お見合いを受けた手前と、『ろくでもない馬の骨に引っかかるよりはずっといい』ということで、幸景さんの申し出を承諾した。
一方私は驚きと不安と……けれどもそれ以上に嬉しく思っている自分に、ちょっとびっくりしていた。
だって、社長夫人なんて絶対に務まらないと思うし、それ以前にどんな生活になるのかすら想像つかない。わからないことだらけだ。
それなのにまた幸景さんと会えると思っただけで、不安に曇っていた心が晴れて顔が勝手に微笑んでしまうのだから。
結婚式は私の大学卒業を待って執り行うことに決まった。それまで約半年。結婚準備期間としては短いけれど、その辺はさすが上流階級の伝手というかなんというか。
私は幸景さんが提示してくれる式場やドレスの中から数点選び、あとは実物を見て気に入れば決めるという、予算や日程など何も心配しなくていいという楽ちんぶりだ。もちろん言うまでもなく、式場もドレスのブランドも庶民においそれと手が出せるものではない。大学の友人曰く、海外のセレブが同じ会場で結婚式を挙げているのをテレビで見たとかなんとか。
そして結婚準備を進める一方で、私は幸景さんと共に過ごす時間を重ねていった。
「おはよう、璃音。そろそろ起きようか」
AM七時。春の日差しのように温かな声で起こされた私は、その心地よさに再び夢の世界に行ってしまいそうになる。
けれどもすんでのところでハッと我を取り戻すと、慌てて瞼を開きガバッと体を起こして枕もとのスマホを確認した。
「またアラーム止まってる……! もう、止めないでって言ったじゃないですか!」
一時間前にセットしたはずのアラームがオフになっていることを確認した私は、起き抜けの開口一番、幸景さんを責めてしまった。
すると幸景さんはキョトンと目を丸くした後おかしそうにフフッと笑って、両手で私の頬を挟んだ。
「おはようの前に怒られるとは思わなかったよ。朝から元気がいいね」
そしてむくれている私の唇にチュッと軽いキスをすると、手を離して「顔を洗っておいで、ご飯できてるから。今日は璃音の好きなヨーグルトのベーグルだよ」とご機嫌そうに言って立ち去った。
朝日が明るく差し込む寝室にひとり残された私は、火照った頬を手で押さえながらため息を吐きだす。
今日も幸景さんより先に起きられなかった……という、結婚して以来毎日している反省をしながら。
幸景さんとのお見合いから半年。夢のような交際期間と慌ただしい結婚準備期間を経て、私たちは二週間前に夫婦になった。
形だけだと思っていたお見合いは、どういうわけか幸景さんから結婚前提の交際申し込みという驚きの展開を迎え、私もうちの両親も驚いているうちにあれよあれよと結婚話は進んでいった。
両親も私も、平凡な和菓子屋の娘に大企業の社長夫人が務まるのかと散々心配したが、幸景さんはそのたびに『僕が璃音さんを支えますから、何も心配しないでください』と笑顔で言い張った。
男性との交際を禁止にするほど過保護で過干渉な父は、当然この結婚話にも渋い顔をしたけれど、結局お見合いを受けた手前と、『ろくでもない馬の骨に引っかかるよりはずっといい』ということで、幸景さんの申し出を承諾した。
一方私は驚きと不安と……けれどもそれ以上に嬉しく思っている自分に、ちょっとびっくりしていた。
だって、社長夫人なんて絶対に務まらないと思うし、それ以前にどんな生活になるのかすら想像つかない。わからないことだらけだ。
それなのにまた幸景さんと会えると思っただけで、不安に曇っていた心が晴れて顔が勝手に微笑んでしまうのだから。
結婚式は私の大学卒業を待って執り行うことに決まった。それまで約半年。結婚準備期間としては短いけれど、その辺はさすが上流階級の伝手というかなんというか。
私は幸景さんが提示してくれる式場やドレスの中から数点選び、あとは実物を見て気に入れば決めるという、予算や日程など何も心配しなくていいという楽ちんぶりだ。もちろん言うまでもなく、式場もドレスのブランドも庶民においそれと手が出せるものではない。大学の友人曰く、海外のセレブが同じ会場で結婚式を挙げているのをテレビで見たとかなんとか。
そして結婚準備を進める一方で、私は幸景さんと共に過ごす時間を重ねていった。