偉大なる使用人
秋はあんまり好きじゃない。
何故だか、夏が終わると急に切なくなる。
英司はそれを「坊ちゃんは感受性が豊かですから」と言ってくれるけど。
幼い頃から沢山の本を読みすぎて
秋は切ないもの、だと頭に植え付けられているのかもしれない。
そういや昔、銀杏の実を英司に投げつけて
カンカンに怒ってたな。
数時間口をきいてくれなくて
ひたすら謝ったんだったな。
この匂いを嗅ぐと、その時を思い出すから切なくなるのかな。
「僕の使用人辞めちゃう?」
全然許してくれない英司にそう言うと
「こんな事で辞めたいと思えたら、どんなに楽でしょう。いつもいつも坊ちゃんは思い切り笑うと背中を叩くし、全くそろそろ加減と言うものを…」
口をきいてくれたと同時に、
長々とお説教が始まったんだったな。
あぁ、懐かしい。