偉大なる使用人




冬は、嫌いだ。

元々寒さも苦手だし、街を歩く人々が揃いも揃って険しい顔をしている様子も嫌いだ。

庭を整備する職人たちだって、
払いのけても払いのけてもまた降り積もる雪に、どれ程うんざりしている事だろう。

目を瞑り、記憶を辿ると
幼い彼女が雪だるまを奏多と呼び、
思いっきり蹴飛ばしている光景を思い出す。

「ふ、」

僕がお腹をおさえて痛がるふりをすれば
慌てて駆け寄ってきて、あれはジンだと弁解したんだ。


特に今年の冬は嫌いだ。


この雪が溶けたら、

僕が一番見たくて一番見たくない、
あの行事がやってくる。

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