とらとうま
なんだ、案外大丈夫かも。先のことを考えられるってことはたぶん。
…馬矢のおかげかもしれない。できればもう二度と会いたくないけど。
でももし帰ってこれるなら、土産に隕石の一つぐらい拾ってきてやろう。
さらば地球よ。
軍施設の門をくぐると、本山さんと、もう一人、見知った制服の後ろ姿ってあれは。
「馬矢くん」
「寅川さん、おはよう」
「おはよう、」
あ、
え。
「番号!」
「いち」
「え、に?」
「よし、全員揃ったな!では今から最終ミーティングを行う。俺について来い!遅れをとるなよ!」
急に走り出した本山さんを私は遠い目で見送った。ついていかなきゃいけないのはわかるけどだって!
「僕も今日宇宙にいくんだ」
「…マジ?」
「まじ」
「うそん」
「いこうか」
馬矢くんが確実に小さくなっていく本山さんの背中を指差し、私たちは仲良く本山さんを追いかけた。ていうかなんで走ってんの、意味わかんない。
「寅川さん」
「は」
「あらためてよろしく」
「あは…よろしく」
無表情な馬矢くんと馬鹿みたいに愛想笑いする私。
なにこれ帰りたい。なにこれ帰りたい。なにこれ帰りたい。なにこれ帰りたい。
『ヒロイズム・ヒロイン 』~終
次回
『小さな箱庭』仮題。