さよならは響かない
ガタン、
勢いのままに教室の扉を閉めて、そこから離れた。
換気のために昼休みは開けておけって言われているけれど、そんなことは知らない。
大きな音を立ててしまった。それでもあの男は、そんなことにも気づかずにへらへら笑っているんだろうな、と思う。
トントン、階段を下りる。
落ち着かない心はいつだって変わらない。
平然としているふりをして、なんとも思っていないようなふりをするのだって本当はいい加減に辞めたい。
あんな光景を見たいわけじゃないけれど、わたしにはあれをやめてほしいという権利もない。
わたしたちは恋人だ。
そんなことは、当の本人であるわたしも、彼も、それから隣の梨可も、色目を使っていた他クラスの女子の周知の事実である。
「『仮面カップル』」
「………、」
「3回目?4回目?あんたたち、今」
「…4回目、だよ」
「本当に、学習しないのね」