さよならは響かない
「ねえ、何回より戻しても別れても何にも変わってないのに、あんたたちは何がしたいの?」
人ごみに紛れる手前、梨可が発した言葉に振り返って、笑って見せた。
そうなったきっかけは知らない、わたしが話すまでは放っておくと言っていた。
けれど梨可はいまのわたしに反対している。
最低な女に成り下がらないでほしい、たぶん、そう思っている。
「──慰めあい、」
「…なに、それ」
「なんだろうね、ほんと、」
階段を下りれば購買戦争はもう始まっていた。
梨可は特に狙っているものはないから、この人混みが過ぎ去るまでおとなしく後ろで待っているらしい。
特に男子が多い購買の中に自ら入っていくほど馬鹿じゃないから、と冷めた言葉をそういえば前言っていたような気もする。
梨可は同級生の誰よりも落ち着いていて、大人っぽい。
だからこそ、本当に想ったことをそのまま口にしてくれるし、それがわたしを否定する言葉でも、わたしは全部受け止める。
梨可は心の底から蜂屋司輝のことが嫌いらしい。
そして、わたしの恋愛関係に関しても、「最低」の二文字だけを必ずいつも落とすのだ。
「──みい?」