さよならは響かない
「みい、放課後HR終わったら迎えに行くから」
「いつも迎えに来てもらってすみません」
「いいの、俺がしたいことだから」
じゃあ、またあとでね。
購買の輪から抜け出してきた先輩の友達と一緒に、ひらひらとこちらに手を振りながら先輩は3年生の校舎へと去っていった。
常盤先輩は、わたしのことが好きらしい。
自惚れなんかじゃなくてこれは事実で、本人の口がわたしに向かってそう言っていた。
『だからと言って、付き合ってほしいとかそういうんじゃないから、俺と一緒に遊びに行きませんか』
初めて話しかけてくれたのは2年生になったばかりの頃だった。
職員室のある3年生の校舎の階段の踊り場、
そこにある窓から、放課後、また違う女の子を連れて帰っていくシキの姿をぼうっと眺めていたときだった。
自分がどれだけひどい顔をしていたのかはわからない。
困った顔をして、わたしの頭にそっと優しく触れた。
離したことも、かかわったこともない人だったのに、わたしはどうしてかそれを簡単に受け入れることができたのだ。
『実はずっと、かわいいと思ってたんだけど、でもいまはそれよりも、きみのことを笑わせてあげたいって思うんだけど、』
───甘いもの、食べたくない?