さよならは響かない
くしゃ、と自分の顔がかなしいとくるしいに色づいていくところをシキは見逃さなかった。
「…んな顔すんなよ」
「─だって、」
わたしの好きな人、シキの好きな人。
シキのお兄ちゃんと、わたしのお姉ちゃん。
姉妹は、兄弟は、どうして同じような人を選んでしまうのだろう。
同じ場所で、同じだけ過ごしていれば、そんなところさえも似てしまうのだろうか。
それでも、お姉ちゃんのことが好きだった。
嫌いになるなんて、ありえなかった。
2人が付き合い初めて3ヶ月たった。
たぶん、別れることはないと思う。
お似合いなのだ。
妹のわたしと、弟のシキからみても、2人は本当にお似合いだった。
わたしとシキの出る幕なんてないのだ。
わたしとシキは、お互いのこと、よくわかってる。
わたしたちしか分からないことがある。
おんなじように、ずっと隣で息をしていた。
わたしたちは、幼馴染だった。
それだけじゃなかった。
わたしたちはふたりして、叶わない恋のつらさを知っている。
幸せなんて、はなから望んでない。
それでも好きになってしまったのは、紛れもない自分たちで。
でも、ひとりじゃないから。
わたしのことを支えてくれるシキがいるから。
わたしは、それだけでいいって思うの。