さよならは響かない
日が暮れた6時過ぎになると、センパイはわたしを家まで送ってくれる。
先輩の家は反対方向なのに、暗いからと最後まで女の子扱いをしてくれる。
車道側を歩いてくれる先輩は、相変わらず私の教科書の入ったバッグを持ってくれていた。
「──あれ、澪央?」
住宅街の交差点、曲がればもう家に着くその手前で前から私の名前を呼ぶ声が届く。
「さ、くにい、」
「え、お前、常盤?」
「ああ、佐久センパイ、久しぶりっす」
「お前、なんでこんなとこにいるんだよ」
動揺している私をよそに、佐久にいは嬉しそうにこちらに駆けよって背中をパンとたたいた。
「え、っと」
佐久にいと、常盤先輩が並んでいる姿が不思議で、それから常盤先輩と二人でいるところをみつかったダブルの動揺を隠せないでいると、常盤先輩がごめん、と謝った。
「蜂屋のこと知ってるんだ、ほんとうは」
「…え?」
「澪央に出会う前から、司輝も俺も会ったことがある」