さよならは響かない
ね、みい。
隣にいるわたしの頭をそっと手のひらが撫でて、佐久にいは不思議そうに首を傾げた。
「…うん、ちがう」
「そっか、常盤おまえ、澪央に変なことすんなよ」
「いや、しないから心配しないでくださいって」
じゃあ俺、ここで帰るね。
佐久にいと少し話をして、時計を見た先輩はわたしにひらひらと手を振り、佐久にいにペコっと軽くお辞儀をしてきた道を帰っていく。
取り残された私と佐久にいは顔を見合わせて、佐久にいの「帰ろっか」という言葉にうなずいた。
「澪央と二人で話すの、久しぶりだな」
「確かに、そうかもしれない」
「澪央、真緒によく似てきたな」
お姉ちゃんと私は、最近似ているねと言われるようになった。
目元が違うだけで、それ以外はそっくりなのだ。
佐久にいとシキの顔は改めてみるとよく似ている気がする。
特に目元はそっくりそのまんまだ。切れ長の二重は、シキとは違う色で私を見下ろしている。
「なあ、久しぶりにちょっと話そうか」
佐久にいの言葉にうなずいて、わたしは蜂屋と書かれた表札の家を、久しぶりに玄関から入った。