さよならは響かない
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2か月ぶりに正面からはいる蜂屋家の玄関は、相変わらず靴箱の上にこどものころのシキと佐久にいの写真が飾ってある。
それをじっと見ていれば、佐久にいは恥ずかしそうに「懐かしいね、まだ司輝にも可愛げがあって」なんて馬鹿にするように笑っていた。
「瀬那さんは?」
「あー、買い物かな、夕飯ちょっと遅くなるって言ってたし」
「そっか」
「なに飲む?ココア?」
「…ココアがいい」
「うん、じゃあ俺の部屋で待ってて」
真緒ねえは、大丈夫なの、
なんてことは聞いたりしないし、お姉ちゃんはわたしがいくら佐久にいと仲良くしていたって何の心配もしないだろう。
階段を上って、いつも呼び出される隣の扉を開ければ、昔からちっとも変わらないお姉ちゃんが色合いを考えた部屋があった。
お姉ちゃんの部屋は白で統一されていて、それにどんどん似てきているような気がする。
佐久にいの生活はお姉ちゃんにどんどん浸食されていて、とても幸せなんだろうなと思った。