さよならは響かない
それはもうとっても。
女の子に不自由しない学校生活を、わたしの目の前で繰り広げています。
なんて、そんなこと言ったら昔の俺みたいだなあっていうのかな。
「最近、澪央と司輝がいるのみなくなったな」
「…いつまでも、ただの幼馴染じゃいれないから」
「でも、ふたりは付き合ってただろ?」
その言葉に驚いて勢いよく顔を上げれば、自分の勉強机の椅子に座ってこちらを見ていた佐久にいと目が合った。
佐久にいはわたしをまっすぐに見据えていた。
そこから視線をもう一度ココアに戻したら、佐久にいは「ごめんね、」と言葉を落とした。
「…実は、昔、部屋の壁越しに聞こえて」
「……、」
「澪央が泣いてて、司輝はたしか、めちゃくちゃ怒ってた」
「……、きいてたの?」
「うんごめん、司輝に泣かされてるのかと思って部屋に行こうと思って扉の前まで行った」
そしたら、司輝の声が聞こえたんだ、
佐久にいはそう言ってから、わたしの名前をもう一度呼んだ。
「…俺でも、覚えてるよ」
あの日のこと。
シキがわたしに怒っていたことなんて、一度きりだ。
わたしのために怒っていた。
中学2年生の冬真っ只中のころだった。