さよならは響かない



いまでも、右腕にあざの跡が残っている。
でもそれは薄くなっていて、もうすぐたぶん、消えていくんだと思う。



シキはずっと、自分のせいだと言い続けた。

別にシキのせいじゃない、わたしが勝手に足を滑らせただけだと言っているのに、ちっとも信じてくれなかった。


頭から落ちるなんて、一人じゃ絶対にありえない、
わたしが嫌がらせを受けているのも何となく気づいていたのに、わたしが3人に呼び出されていく姿をそのまま見送った自分が悪い。



『なんで言ってくれなかったんだよ』


ミオは強いから、そんな嫌がらせも気にしてないと思ってた。
そう思わせたのは、気にしないふりをしていたわたしだ。

陰口だって悪口だって、別に痛くもかゆくもないって、言いたかった。


でも、クラスメイトがどんどん遠ざかっていくことには、耐えられなかった。



シキは初めて私に怒った。
怒っているのに、わたしを馬鹿みたいに優しく抱きしめるのだ。



『頼むから、俺を頼って』



頼れるわけなんてないのだ。
わたしとシキがこれ以上恋人でいる必要すら、もうわからなかった。


それでも別れたいと言えなかったのは、
どうしても、シキがわたしから離れていくことが怖かったからだ。


シキは今でもずっと、あの日の後悔を引きずっている。
わたしはそれに、甘えている。


自分たちを守るために始めた恋人ごっこは、自分たちを苦しめているだけだった。



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