さよならは響かない



初めて口に出してしまえば、思ったよりもあっけなくて、

でもどうしても、もう抑えられなくなってしまいそうな気がした。



シキが好きだった。
もうずっと、シキだけしか見れないのだ。


どんどん離れて行ってしまうシキなのに、
たったひとつ、シキがくれるふたりきりの時間が、どうしようもなく好きだった。


シキがくれる慰めもキスも、ぜんぶわたしのことを想っていなくたって、シキに触れることができるのならそれでもいいと思っていた。



シキがわたしだけを見てくれなくたって、それでも、いいと思うくらいには好きだった。




「…澪央、泣かないで」


気づけば涙がボロボロと頬を伝ってスカートに染みを作っていた。

佐久にいは部屋のティッシュをわたしに差し出して、慰めるように背中をさすってくれる。

堪えずにあふれた本音を、黙って聴いていた。



「…ほんとうは、ずっと、佐久にいのことが好きだったの」

「……うん、」

「シキはわたしじゃなくて、お姉ちゃんが好きで、」

「……うん、」


「絶対にかなわないから、ふたりで、慰めるために、付き合ったの」



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