さよならは響かない
恋は幸せなことだけじゃないことを、わたしとシキはよく知っている。
そのなかで、ほんの少しのやさしさとときめきが、恋の幸せだってことを知っている。
佐久にいのやさしさが好きだった。
初恋は、少し苦しくて、優しいものだった。
いま、わたしが持っている恋心はそれよりもずっと、苦しくて、悲しい。
いつだってわたしの心を引き裂くように傷つける学校での行動も、
信じられないくらい甘いキスを落としてくれるのも、
わたしを苦しめては慰めて、ちぐはぐな不幸せを半分にしてくれるのも。
シキだけなのだ。
シキがくれるすべてを、わたしは幸せだと思わなければいけない。
シキといるわたしはいつだって幸せのままでいけないといけない。
わたしの幸せを壊したのはシキなんだから、
シキにはずっと、責任を負い続けてほしい。
「ちがうよ、」
「……、」
「澪央が心の底から笑って、悲しいをなくさないと、それは幸せなんかじゃない」
「……っ、」
「もうとっくに俺のことなんか好きじゃないって、ちゃんとあいつに伝えるべきだよ」
「…そんなの、無理だよ、」
「それを言ったら、とかそういうの全部取り除いて、澪央をずっと苦しめてるのがふたりの嘘なら、俺はそんなの大切にする必要はないと思う」