さよならは響かない
わたしもシキも、カメラに向かってピースをして、もう片方の手のひらどうしは繋がっていた。
幼稚園の頃の私たちは仲良しで、お母さんたちが迎えに来てくれているのにもかかわらずふたりで手をつないで帰っていたくらいだ。
シキと手をつなぐことが当たり前で、シキの隣に並んで歩くのが当たり前で、それがずっと続くと思っていた。
このころの私たちには、もう二度と戻れない。
本棚の下に立てかけてある教科書たちの一番端に、見覚えのあるアルバムが立てかけてある。
青色のアルバムカバーは、わたしの部屋にあるものと同じだった。
小学校を卒業するときにわたしのお母さんとシキのお母さんが一緒に作って渡してくれた、わたしとシキがふたりで映っている写真を集めたようなアルバムだ。
──司輝の成長アルバムとして作ったはずなのに、どの写真にも全部澪央が映っているのよ、
シキのお母さんである瀬那さんにそう言われて、シキがお風呂に入っているときにこっそり一人で開いたことを思い出す。
小学校を卒業したころのシキはわたしとずっとにいるのを友達にからかわれて恥ずかしくて、アルバムだって絶対見るなと言っていたからだ。
いつも見ていたこの部屋なのに、それがいまさら目についてしまうなんて悔しい。
シキの視界にわたしが映っていないことをいいことに、わたしはそのアルバムに手を伸ばした。
スマホから流れている銃の音にシキは夢中で、わたしが建てた物音なんて何にも気にしていなかった。