さよならは響かない
自分からシキを求めるのは、あとにも先にも、今日で最後にしようと思う。
シキに無理やりされるキスも、シキが同意を求めてからするキスも、全部好きだった。
シキがくれる口づけに意味がなくても、わたしには受け入れる意味があった。
わたしがする口づけに、意味はあっても、
シキが受け入れてくれる理由は、やっぱりないんだと思う。
自分から離れていく、掴んでいた腕を手放そうとすれば、反対に捕まれた。
「……ミオ」
「ねえ、もう、やめよう」
声が震えているのも、頬が自分の涙でぬれているのも、全部分かったうえで言った。
シキの顔なんて見たくない、動揺の色ひとつも見えないシキが容易く想像ついてしまって、これ以上傷つきたくなかったからだ。
「…、は?」
「シキはもう、わたしを選ばなくてもいいよ」
「……意味、わかんねえ」
「もうシキと、これ以上は一緒にいれない」
──だから、別れよう。
そう、さよならを告げたのは何度目だろうか。
それでも、これまでと今がちっとも違うことを、シキはどうやら気づいているようだった。