さよならは響かない
「…ミオ、こっち向いて」
「……むかない、」
「なんで」
「……、」
「…なあ、なんで、泣いてんの?」
シキがそんな顔をする理由を教えてほしい。
うそ、やっぱり、知りたくない。
シキのせいだよ。
わたしはもうずっと、シキのせいで泣いている。
こころがズタズタに傷ついてる。
全部、シキのせいだよ。
「なあ、」
「……、」
「…みお、」
無理矢理、上を向かされた。
シキの手のひらが、輪郭をなぞって、お揃いの青いピアスにそっと触れる。
そんなに優しく触れないでほしい。
きみがわたしの身体に刻んだ傷だ。
視界に入るもう片方のピアスだけに、シキがわたしを求める理由があるような気がした。
酷い顔をしているのに、そこから逃げられないように逸らせない。
シキと視線が絡んだ。
シキは、傷ついたような顔をしていた。
「……なんで、泣いてんの」
「……わかんないの、?」
「…兄貴、の、」
「違うよ、」
──シキのせいだよ。
こころの中で何度もつぶやいていた言葉を口にすれば、わかりやすくシキは傷ついた。
瞳がぐらぐらと揺れている、そのなかに、涙をぼろぼろとこぼしているわたしが映っている。
「…もうずっと、佐久にいのこと、吹っ切ってる」
「──…っ、」
「ごめん、わたしはもう、シキの気持ちに寄り添えない」