さよならは響かない




「…ミオ、こっち向いて」

「……むかない、」

「なんで」

「……、」


「…なあ、なんで、泣いてんの?」


シキがそんな顔をする理由を教えてほしい。

うそ、やっぱり、知りたくない。



シキのせいだよ。
わたしはもうずっと、シキのせいで泣いている。


こころがズタズタに傷ついてる。

全部、シキのせいだよ。




「なあ、」

「……、」

「…みお、」



無理矢理、上を向かされた。

シキの手のひらが、輪郭をなぞって、お揃いの青いピアスにそっと触れる。


そんなに優しく触れないでほしい。
きみがわたしの身体に刻んだ傷だ。

視界に入るもう片方のピアスだけに、シキがわたしを求める理由があるような気がした。



酷い顔をしているのに、そこから逃げられないように逸らせない。


シキと視線が絡んだ。
シキは、傷ついたような顔をしていた。




「……なんで、泣いてんの」

「……わかんないの、?」

「…兄貴、の、」

「違うよ、」




──シキのせいだよ。



こころの中で何度もつぶやいていた言葉を口にすれば、わかりやすくシキは傷ついた。

瞳がぐらぐらと揺れている、そのなかに、涙をぼろぼろとこぼしているわたしが映っている。





「…もうずっと、佐久にいのこと、吹っ切ってる」

「──…っ、」

「ごめん、わたしはもう、シキの気持ちに寄り添えない」


< 51 / 84 >

この作品をシェア

pagetop