さよならは響かない




シキの苦しい片想いに、これ以上わたしは同情することはできない。

シキとおんなじ気持ちを持っていたわたしは、もうとっくの3年前にいなくなっている。




「……いつ、から、」

「…ほとんど、ずっと」

「…どういうこと、」



シキの顔がくしゃ、と歪んだ。

シキの感情を見るのは久しぶりだった。
いっつもおんなじ表情で私を見るのに、シキが見せてくれた感情をいまさらいとおしいと思ってしまった。



「わたしたちがもう、恋人である必要は、ないってことだよ」




ごめんね、

腕にこもっていたちからが、急に解けていく。
力なく下に落ちていく手のひらを、ただずっと見ていた。



「…それでも、俺は、」

「ちがう、」

「なにも違くない、」

「シキは悪くないから、全部」




シキにずっと、甘えてた。
シキがわたしを手放せない理由に、しがみついていただけだった。





「もう、お姉ちゃんのこと好きなままのシキの恋人ではいれない」

「……おれは、」

「慰めるだけの関係なんて、そんなの恋人じゃないって、シキもわかってるでしょう」




シキの言葉を、なにひとつ聞きたくないと思った。

これまでさんざん、何も言ってくれないシキが嫌だったのに、シキが話しだそうとするのを遮るのに精いっぱいだった。


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