さよならは響かない
抜け出した腕、重ならない視線、俯いているシキ。
そこから一歩遠ざかるためにベッドから降りようとすれば、もう一度捕まった。
「…な、に」
「…じゃあこれから、どうすればミオのこと守れんの?」
「……っ、」
「他人にいまさら、戻れると思ってんの?」
戻れないよ。
でもそれでも、わたしは一度もシキに守ってほしいなんて思ったことはない。
シキがわたしの涙を指で掬った。
その指にいつまでも甘えているわけにはいかない。
その手を払えば、シキはまた、困った顔をした。
「…シキに守ってもらわなくても、大丈夫」
「…本気で、言ってんの?」
「ねえ、もうあの日のこと全部、自分の責任だって思うのやめて、」
シキの瞳の色が変わったような気がする。
怒っているのだ、
わたしは、わたしがシキを怒らせるような言い方をしたこともわかっている。
「…俺のせいだろ」
「だから、ちがうって、」
「知ってる」
「……なんにも、知らない、」
「言わないで、って言ったんだってな、先生にも、あいつらにも」
「……、なんの、はなし」
「わかってんだよ、俺のせいで怪我したのも、全部」