さよならは響かない




反動のまま立ち上がって、こっちを見ないシキに背を向けた。

わたしの名前をそうやって優しく、呼ぶのはもうやめてほしい。



「もう、好きじゃないよ」

「……ッ、」

「真緒のこと、もう好きじゃない」



ミオ、
わたしのことを呼ぶ声から逃げるように窓に手をかけた。


聞きたく、ない。




「なあ、好きなやつ、いんの?」



そんなこと聞かないでほしい。

シキのことが好きだなんて、絶対に言いたくないのだ。




言わないまま終わらせるのが、正解だと思うから。

他人に戻れないのならせめて、シキのことを好きなだけのわたしでいさせてほしい。




「…シキこそ、」

「……」

「ほんとうは、いるでしょう、」




お姉ちゃんのことが好きじゃないのなら、
わたしたちが今まで恋人を続けていた理由は、ちっぽけなシキの責任で、それに見ないふりをしていたわたしがいたからだ。


わたしじゃない誰かに手を出すようになったのも、
わたしを守るためだとばかり思っていたけれど、本当はわたし以外のだれかに助けを求めていたのかもしれない。



シキはわたし以外のだれかに、本気になれる子を探していたんだと思う。


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