さよならは響かない
「……わかるわけ、ねえだろ」
そうだね、
だってわたしたちは、結局お互いのほんとうの気持ちなんて知らないままだ。
壁に打ち付けたこぶしが、シキがあの時くらい怒っていることを表していた。
わたしはもうその手を、両手で包んであげることはできないし、弱った背中を抱きしめることも、無理やり近づいてくるキスにこたえることもできない。
ただの幼馴染にはもう、戻れない。
ごめんね、わたしのせいだよ。
右耳から青いピアスを外した。
もうわたしたちに、お揃いは必要ない。
きみがくれたんだから、きみが責任もって捨ててほしい。
わたしはこれを捨てることもできないし、これ以上身につけておくこともできない。
それから、わざとらしく、シキの机に置いた。
「…さよなら、シキ」
シキはもう、引き留めてくれなかった。
わたしの名前を、呼んでくれなかった。
窓から逃げるように自分の部屋に飛び込んで、
わたしはそのまま、枕に顔を埋めて泣き続けた。
いくら泣いても枯れないのなら、
わたしのこの気持ちは、一生このまんまなのかもしれない。
4度目のさよならは、
もう二度と、シキと恋人に戻れない終わりだった。