さよならは響かない
聞いたのは自分からだったけど、
わたしはそれを、澪央の口からききたかったよ、
梨可が零す言葉に、胸が痛いほど苦しめられる。
何にも聞かないままでいてくれたやさしさの中で、梨可が抱えていたものは、わたしとおんなじくらい苦しいものだったのかもしれないと思った。
「…ごめんね、」
『謝るくらいなら早く教えてほしいけど、話したくないなら聞かない』
「……ううん、話す」
だって、全部終わったから。
自分の口でそれを説明するのは、自分の首を絞めるような行為だと、自分で「別れた」と言葉にしたときに気づいた。
わたしたちはお互いをちっとも恋愛としてみていなかった幼馴染であったこと、、わたしがシキのお兄ちゃんのことを好きで、シキがわたしのお姉ちゃんのことが好きだったことも、慰め合いのような始まり方も、シキのことが好きな女の子たちから受けていた嫌がらせも、あの事件のことも、全部話した。
梨可はわたしの言葉を聞き逃さないように黙って聞いていた。
客観的に話すことで、まるで自分のはなしじゃないような気がしたけれど、シキの名前を出すたびにやっぱり心が締め付けられるようだった。
さすがに今日は泣けなかった、というより、さっき冷やしたばかりなのに泣くわけにもいかなかった。