さよならは響かない
『蜂屋司輝、やめるらしいよ』
梨可に言われた言葉だけがずっと引っかかっていた。
教室で一人でいたシキに自分から話しかけにいったことを、メンドクサイよりも友情を優先させてくれたのだ。
梨可は相変わらずシキのことは好きになれなそうだと言っていた。
けれど私が好きなのなら、いいところを探してみるとも言っていた。
一言余計に、たぶんむりだと表情を歪めていたけれど。
『適当な女子に適当に接すること、もうしないって』
シキの周りに、女の子はいなかった。
隣のクラスのあの子ですら、教室に来なかったという。
シキの考えていることは、
やっぱり、なにもわからない。
たった一人を選ぶのはめんどくさいから、もう誰も相手にしないのかもしれない。
ほんとうは、女の子と遊ぶなんてことしたくなかったのかもしれない。
『…私のこと好きじゃないんだから、わたしばかりを優先にしなくたっていいよ』
恋情なんて理解できない不器用な嫉妬心は、高校に入ってすぐ強がりのままシキに伝えられた。
ほかの子と遊んだっていい、
まぎれもなく、そうさせたのはわたしだったのだから。
それでも、シキは楽しそうだったし、
シキはずっとこうしたかったのかもしれないと思っていた。
本当はわたしのお守りなんてしたくなくて、自由になりたいんだとばかり思っていた。
せっかく離れてあげたのに、
シキは女の子と遊ぶのをやめた。