さよならは響かない
「…それは、ちがいます」
「ううん、ちがくない」
「…そんなこと、
「みいがだれでもいいことを利用して、俺の一方的な気持ちを押し付けた」
「……っ、」
「会うたびに好きだって言っても、みいはちゃんと聞いてくれる。けど、毎回謝ろうとするのを、俺は遮る」
「……そんなの、」
「蜂屋よりも大切にしてあげるから、って思ってた」
でもそんなの、俺のエゴでしかない、
必死に首を振れば、頭の上にやさしい手のひらが下りてくる。
その優しさだけで泣きそうになって、目にきゅっと力を入れた。
先輩の前で泣くわけには、いかなかった。
先輩の立場だったら、泣きたいのは、わたしじゃない。
「……先輩に、伝えたいことがたくさんあります、」
「うん、」
「いつもそばにいてくれて、優しいも、楽しいもくれて、笑わせてくれたり、考えないようにさせてくれたり、」
「……、」
「本当に、助けられてたんです、」
先輩のやさしさに甘えていた。
わたしのことを好きでいてくれるから、この人はわたしから離れていかないから、週に一度行くファミレスも、暗いから家まで送ってくれるのも、毎回気持ちを伝えてくれることも、全部。
わたしがひとりにならないために、
わたしが彼の真似をする、そのために、センパイは笑って私の隣にいてくれた。