さよならは響かない





開けっ放しのドアから教室に入れば、梨可がすぐに気づいておはよう、と言ってくれた。

それ以外の女の子たちはわたしを見るなりおはようといったのちに、わたしとシキを交互に見て、ひそひそと何かを話していた。



シキは自分の席で突っ伏していた。

クラスの男子と一言二言話しては、だるそうに机に手をついて頭を置いていた。



「だいじょうぶそう?」

「うん、だいじょうぶ」



先輩と話をしてきたことをわかっていた梨可は、そう、とそっけなく返して担任が教室に入ってきたからおとなしく自分の席に戻る。



HRのはなしは1限が体育だからという理由であっという間に終わる。


ばらばらと教室を出ていき、更衣室に向かう。

体育なんて気分になれないまま1時間バレーをして、肌寒くなってきているから汗もかかずに、眠気だけがなくなる。


ゲームの待ち時間では梨可と二人で昨日食べたケーキがおいしかったと話したり、それなりに仲のいい女の子たちにシキと別れたことを確認されたり、シキと遊んでいた女の子たちに睨まれていたり、あっという間に終わった。




教室に戻って、2に時間目が始まってもシキは教室に帰ってこなかった。


4限の移動教室が終わった後、
シキの机の横からバッグがなくなっていた。



< 71 / 84 >

この作品をシェア

pagetop