さよならは響かない
不誠実の真似事、きみが抱える、後悔






キンコン、

いつもの聞きなれたチャイムが鳴って、ガタガタと机といすの音ののちに、学級委員は速やかに号令をかける。


最後の言葉が言い終わるころにはもう半分の人が自分の時間に入り込んでいた。
食堂やらなんやらとあっという間にクラスメイトは半分もいなくなる。


さっさと身支度を整えた4限の担当だった英語教師は颯爽と教室を出ていく。
職員室では愛妻弁当が待っているのだといつかの授業中に惚気を落としていたような気もする。




ぼうっとしていたら板書が追い付かなかったわたしはもう一度席に座って残りの3行を急いで書き留める。
それからいつもの通りにお弁当を取り出して、クラスメイトで一番仲良くしている梨可の机に向かおうとそっちを向けば、財布をバッグから取り出していた。




「ごめん、今日購買行かないとなの忘れてた」

「あ、そうなの?ついてくよ」

「ありがとう」




騒がしい教室。

財布だけをバッグから取り出して先に廊下に出ていく梨可に慌ててついていけば、扉の死角からはいりこんできた人と肩がぶつかる。





「あ、ごめ…、」

「──あー、見えなかった」


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