さよならは響かない











離れようと思って、離れられなくて、その繰り返し。

わたしたちの始まりは不純で、どうしようもない、さみしい不幸せの分け合いっこだった。



シキはわたしを好きにならない。
わたしはシキを、好きにならない。



どんどん遠ざかって、すれ違って、
相手の気持ちがどんどんわからなくなる。


午後十時半、きみの呼び出しの理由を知らないまま、互いの気持ちを探るように、そばにいた。

きみがくれるキスは、いつだって私もきみも疵付けられる。




さよならを、何度も、した。
そうすることが、一番だと思っていた。


それでもわたしたちには、
何度めぐっても、さよならは響かない。



もう、手放さないでほしい。

そばにいてほしい、ずっと、隣に。




「あのね、シキも、わたしのこと呼んでたよ」

「…しらない、」

「そばにいてほしいって、言ってたよ」

「……さすがに、もう離さないし」

「うん、わたしも、ね」



 ─ さよならは響かない end. ─
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