さよならは響かない
冷たい瞳がわたしを見下ろす。
その姿をとらえた瞬間に、それはわたしから逃げるように教室の自分の席に戻っていった。
「ハチ~、今日の放課後暇~?」
「あー、まあ暇っちゃ暇だし、そうじゃないとも言える」
「なにそれ~」
「俺がいつでも暇だと思うなよ」
「はいはい、そんで今日は、わたしの日にしてくれる?」
「俺は高いよ?」
バレないように彼の背中を視線で追いかければ、席に近づいた瞬間に待っていたかのように他クラスの女子が甘ったるい声で話しかけている。
それにまんざらでもないように笑って見せて、馬鹿馬鹿しい会話を繰り広げてた。
「……澪央、」
「…あ、ごめん、」
逃げるようにその教室から視線を逃がせば、呆れたように梨可がわたしを冷ややかな目で見ていた。
それからわたしが向いていた視線の先をたどって、わたしの名前を呼んだ。
「……ねえ、ほんと、どーなってんの?あんたの彼氏」
ありえないんですけど、
その言葉に呆れるように笑って、そこから背を向けた。
「…どうなってるんだろうね、ホント」