夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
ピロン。

着信メッセージがきた音で我に返る。一瞬母か父からかもと淡い期待を抱いたけれど、その主が咲結とわかってしまったところで、水の泡となって消えていった。

でもちょうど椿のことを伝えておきたかったので好都合だ。急いで咲結からのメッセージに目を通す。

『今日も東山君の家、訪ねに行ったんだよね?どうだった?』

そんなメッセージが送られてきていた。きっと恋愛話が出てくるのを心待ちにしているのだろう。でも今は夢みたいな話をしている場合じゃない。

『それがね……』

私は母から虐待を受けている椿のことを文字におこし、咲結にメッセージとして送信した。

『まじ?絶対助けてあげなきゃじゃん!』

咲結は話を聞いて驚いているらしい。確かに衝撃の事実だったから無理もない。でもその椿から、元はいじめられていたのにそこは気にしないのかな。違和感を抱いて聞いてみると、

『あれは確かに辛かったけれど、一番悲しい思いしてるのは東山君とわかったから、今は仕方ないって思うよ』

と数分もしないうちに返信がきた。我ながら咲結らしい意見だと納得した。

『なんかあったら言ってね。私も全力でサポートするから』

そんな返信が送られてくる。中二のときはつまらないと私をいじめてきていたのにそれが嘘みたいだ。

その時、一階の洗面所の方からドアが開いたような音がする。どうやら椿が風呂から出てきたようだ。私は慌てて『ありがとう。またね』とメッセージを送り、一階へと降りた。
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