夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
廊下では灰色のスウェット上下を身にまとい、白いタオルでツーブロックの栗色の髪を拭いている椿がいた。

「湯加減、どうだった?」

「ちょうどよかったぜ」

「そっか。じゃあ風呂入ってくるから、リビングでゆっくりしてて」

そう告げてから風呂に入った。

着ていた制服をパパッと脱ぎ、洗濯機の中に投げ入れ、まわす。お世辞かもしれないけれど、椿の青いパーカーとジーンズも洗濯にいれた。

それからシャワーを浴びて、セミロングの髪をわしゃわしゃとシャンプーで洗う。

ところで、椿の母はどうして実の息子に虐待をしたのだろう。虐待という事実に驚きすぎて理由を聞くのをすっかり忘れていた。椿を助けるためにも聞いておかなきゃ。

シャワーの水を出し、シャンプーでいっぱいになった髪をゆすぐ。それから風呂を出て、寝間着に使っている淡いピンクのトレーナーと黒のズボンを身にまとった。

びしょびしょの髪をタオルで拭いながらリビングに行く。椅子に座っている椿は暇そうにスマホをいじっていた。

「あれ?スマホ、持ってたんだ?」

つい母から虐待を受けているからスマホも持たされてないと思っていたが、それは的外れだったようだ。

「おう。父から貰ってさ。母の前で使ってたら壊されそうだから隠してるけれど」
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