夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
急に何の前触れもなく、目の前が暗くなる。さっきの光景はどこにいったのだろうか。辺り一面黒一色で人の気配すらもしない。混乱しているうちに何事もなかったかのようにぱっと明るくなった。

辺りを見渡すとついさっき椿がいた洗面所ではない。椿の父親が運転している車の中だ。どうやら学校に向かっている途中らしい。まるでミュージカルでよくある場面転換のように数十分が一瞬にして過ぎたみたいだ。

幼い椿はというと、私の隣に座っている。幼い子供など今まであまり気にしていなかったからか、懐かしく思えた。

車は微かな大きなたてながらどんどん交差点を進んでいく。この度に窓の景色は流れるように変わっていった。

「あっ!そうだ、椿」

椿の父親がふと何かを思い出したように言う。

「なあに?父さん」

椿は肩にシートベルトをかけていながらも身を乗り出して興味津々に耳をすましている。

「今日は父さんは仕事で遅いし、母さんも仕事仲間と外食にいくから遅くなるって言ってたから、祖父の家で夕食を食べてな」

父親がハンドルを回しながら言った。

「うん!お爺ちゃんの家、久しぶりだな」

椿は興奮しているようではしゃぎぎみに言う。ロングの髪がゆらゆらと揺れた。
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