夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~

並木道を歩いていた幼い椿に追い付き、歩調のペースに合わせて隣を歩く。こうしてみてみると、小学一年生というのはずいぶん背が低い。自分も九年前はこれぐらい低かったと思うと、懐かしくて眺める景色も何倍も広く見えていて、自分をよりちっぽけな存在だと感じた。

この夢の中という世界では、私は幽霊。誰の目にも止まることはなく、声をかけられることもない。逆に私から声をかけたって届くこともない。ただ何事もなかったかのように知らんぷりされるだけ。儚くて脆い、そんな存在だ。だから幼い椿に話しかけることもできない。きっと許されるのは温かく見守るようにそばにいるだけだ。

幼い椿の背中に誰かが投げてきたと思われる数粒の小石がパラパラと当たる。一体誰が投げてきたのかとその方を振り返ると、いじわるそうにクスクスと笑っている男子が三人いた。

「おーい！椿ちゃん」

「今日も女子みてぇだな」

「ほんと、前髪も長くてお化けみたい」

へらへらと笑いながら三人は幼い椿をからかう。

どうやらこの三人は幼い椿を髪が長いというだけで女子扱いし、小石をぶつけていじめているようだ。

それに対して、幼い椿は抗おうとも何か言い返すこともなく、拳を強く握りしめて男子たちを無視して校舎の方へ歩いている。まるでその姿は辛い気持ちを精一杯抑え込んで、我慢しているかのようだった。

男子たち三人はクスクスと笑いながら、小石を投げつける手を止めようともしない。腹がたって仕方がなかった。幼い椿、本人は何も悪くないからだ。ならばその背中を私が守りたい。あくまで夢の中だから、椿の過去を変えてしまうことはないだろう。