夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
私と仁菜の未練は一致している。つまりそれを私が放棄してしまえば、仁菜もあの世へ逝けなくなってしまう。そうしてこの地に縛り付けられ、人を呪い続ける存在となる者を増やしてしまう。その分、不幸になる人も増えるのだ。

幼い頃から一緒に育ってきた仲だもの。人を不幸にさせる存在になんか絶対させない。

「私に助けさせて。生きる意味なら他にも見つけられるよ。仁菜や咲結、椿の父にとってもこれが最善の手段なの。お願い。不幸な人を増やしたくないの」

嗚咽混じりに言い放った。

幸せなんて人それぞれ。たとえ私がいなくなった世界でも見つけられるはず。そう信じたい。

それに人生の最期を不幸で終わらせるのは、私と仁菜で最後にしたい。

長い沈黙の後、椿は拳を爪の先が皮膚に食い込みそうなくらい強く、握りしめながら言葉を紡んだ。

「わかった。俺、もう一度母さんに立ち向かってみるよ。ひとりじゃなくて、胡桃となら……乗り越えられる気がするから」

その顔はいかにも真剣そうだ。揺らぐことのない固い決心と唇が震えていることから、母への怯えを持っていることがわかった。

「大丈夫。一緒に乗り込もう」

自分に言い聞かせるように、私は言った。それから精一杯、笑顔を作る。それを見て椿は大きく頷いてくれた。

「さて、そろそろ頃あいかな」
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