夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
握られた手が温かい。不思議と心は落ち着きを見せていた。

ひとつ、呼吸をする。

それから意を決して、口を開いた。

「じゃ、押すよ」

椿が大きく頷いたのを確認する。それからインターホンを押そうとした、その時だった。

「お待ちください」

どこからか、声が聞こえる。

辺りを見渡しても椿しかいない。

声の主は……。

「紡さん?」

「聞こえてるようですね。よかった」

柔らかい声。それはなぜか、頭の中から聞こえているようだった。驚きと混乱で、たくさんのクエスチョンマークが頭に浮かぶ。

「勝手に頭の中へ入ってきてしまい、すいません」

紡さんの姿はないのに、穏やかな声だけが聞こえてくる。まるで、テレパシーのよう。

「いえ……」

そう言いながらも、突然の出来事に、息をするのも忘れそう。

「私は人の心も読めます。つまり、頭の中でも会話できるんです」
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