夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
そんな魔法みたいなこと。死んでる人間が突然、目の前に現れたら椿の母はどんな反応をするのだろうか。

そもそも私の存在を知っているのか。知らないなら、問題はない。あれやこれやと説明する手間が省けるから、さらなる混乱を招かなくて済む。

でも……。

「なんで……」

私から頼んだわけでもないのに。してくれるのは当然嬉しいんだけど、なんだか申し訳なくなる。

「未練解消なさるんですね。仁菜様から聞きました」

その名前に安堵を覚える。昨夜仁菜が『なんとかする』と言っていたのはこのことか。今になって、ようやく理解する。

「では、悔いの残らないよう、健闘を祈ります」

その声が脳裏に響いた途端、全身が目映い金色の光に包まれた。それと同時に辺りの時間も動き始める。

「どうした?」

金色の光に目を捕らわれていると、椿が不思議そうな表情で私を見た。

「ううん、なんでもない」

たぶん、この光は椿には見えてないのだろう。言われたわけではないが、それがわかった。

「じゃ、押すよ」

覚悟を決めたように椿は頷いてくれた。
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