夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
椿が手を握り返してくれる。それから私の前に出た。

「女に生まれたのはすまない。だからって髪を長くさせられるのは困るんだ。からかわれるし、変な目で見られるし」

それは、コンプレックスを引きずっているよう。

「俺自身もこの髪型が好きなんだ」

ツーブロックに整えられた髪に触れながら椿は言った。今まで見たこともないくらい、真剣な顔で、どう口を挟めばよいか、わからなくなった私はその場に立ち尽くし、茫然とする。

そんな私を置いて、椿は言葉を紡ぐ

「俺は何度叩かれたって傷つかれたって抗い続けるよ。おやじのためにも。だからいい加減、折れてくれないか?」

揺るぎない目をして、椿は訴えかけた。

その声に怒りのボルテージが上がった椿の母は、カッターナイフを椿の腕に振りおろそうとする。

危ない!!

そう思って、椿と椿の母の間に割り込むように入る。

それから間もなく、握られてない腕の方に鋭い痛みが走った。切りつけられたような傷が深く現れ、血も滲み出ている。

「……胡桃」

椿が手を握り返してくれる。今までにない強い力で。その温かさと強さに鼓動が速さを増した。
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