夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
「こっちです。東山君のお父さん」
近くから咲結の声が聞こえる。
実はもしもの時のためにと、呼んでおいたのだ。少し遅かったけれど。
そのことを知らない椿は当然のごとく、目を丸くして、辺りをチラチラ見回している。その間にも警察官でもある、椿の父は妻の元へと駆け寄る。
「遅くなってすまん。まさかこんな近くに犯罪が起こってたとは。警察失格だな」
椿の父はボソボソ呟いてから「午前07時08分、虐待の罪で現行犯逮捕」と言って妻の腕に手錠をかけた。
そのことに何も抵抗を示さない母。きっと状況を理解した途端、終わった逃げられないと悟ってくれたのだろう。
「おやじの遺書見て知って、いち早く捕まえないとって思っていたのだが、随分遅くなってしもた。九年もまたせてごめん。お詫びとしてはなんだが、俺を一発殴ってくれ」
申し訳なさそうに顔を俯かせて、椿の父は言った。その頭にお望み通りと、容赦なしのげんこつが食らわされる。
「遅すぎ。待ちくたびれた。さすがに自殺に走るとこやったわ」
肩をすくめて、困ったように椿は笑った。それからまた、言葉を紡ぐ。
「それを胡桃が止めてくれた。だから立ち向かえた」
椿がさっきよりも強く、私の手を握り返してくれる。胸をわしづかみにされたような錯覚に陥り、思考が停止する。
近くから咲結の声が聞こえる。
実はもしもの時のためにと、呼んでおいたのだ。少し遅かったけれど。
そのことを知らない椿は当然のごとく、目を丸くして、辺りをチラチラ見回している。その間にも警察官でもある、椿の父は妻の元へと駆け寄る。
「遅くなってすまん。まさかこんな近くに犯罪が起こってたとは。警察失格だな」
椿の父はボソボソ呟いてから「午前07時08分、虐待の罪で現行犯逮捕」と言って妻の腕に手錠をかけた。
そのことに何も抵抗を示さない母。きっと状況を理解した途端、終わった逃げられないと悟ってくれたのだろう。
「おやじの遺書見て知って、いち早く捕まえないとって思っていたのだが、随分遅くなってしもた。九年もまたせてごめん。お詫びとしてはなんだが、俺を一発殴ってくれ」
申し訳なさそうに顔を俯かせて、椿の父は言った。その頭にお望み通りと、容赦なしのげんこつが食らわされる。
「遅すぎ。待ちくたびれた。さすがに自殺に走るとこやったわ」
肩をすくめて、困ったように椿は笑った。それからまた、言葉を紡ぐ。
「それを胡桃が止めてくれた。だから立ち向かえた」
椿がさっきよりも強く、私の手を握り返してくれる。胸をわしづかみにされたような錯覚に陥り、思考が停止する。