夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
「君がその胡桃さんですね?ここまで連れてきてくれた咲結も含め、ご協力感謝します」

そう敬礼をした椿の父は深々と頭を下げて、妻を連行した。

事態がおさまり、大きな安堵を覚えた私は脱力して、道端に倒れそうになる。それを椿が支えてくれた。

「大丈夫か?胡桃」

心配そうな顔の椿の隣には、目尻を下げた咲結がいる。

「ごめんごめん、大丈夫だって」

平然な口調でいい、立ち上がる。気がつくと体を包んでいた、金色の光は既に消えていた。

「じゃなくて、腕の傷」

言われて確認してみると、その腕にはえぐられたような深い傷があり、血もまだ止まってないみたいだ。

「救急車呼んで。梅野」

「任せて」

ポケットからスマホを取り出した咲結は、電話をかけようとしている。

「これぐらい大丈夫だよ。それに私、幽霊だよ」

その上、こんな傷で救急車呼ぶとか大袈裟だし。光が消えたあとの状態では今まで通り、咲結と椿にしか見えないんだから、救急車を呼んだとしても、「ただのおふざけだ」と受け流されかねない。

「あっ、そっか。忘れてた一瞬」

間抜けな顔で咲結は笑う。

「じゃ、どうすんだよ。この傷。せめて、応急処置だけでも……」
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