夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
そう言ってポケットからハンカチを取り出そうとする椿の手を、私でも咲結でもない、誰かの手が止めた。

「構いませんよ。私が治しますから」

頭上からかかる、柔らかみのある声。

「その声は……誰?」

「紡さん?」

上を見上げると、紡さんが宙に浮いている。その隣には幽霊の咲結も浮いていた。ふたりの姿はどうやら、椿と咲結にも見えているらしい。

「冗談……じゃないですよね?」

椿が紡さんに詰め寄るように言う。

「嘘ではありませんよ。……ほら」

そう言うと、紡さんは私の腕の傷に触れる。するとその手から金色の光が放たれ、その光と共に傷は消えていった。まるで最初から怪我なんかしていなかったみたいに、瘡蓋や傷痕すら残っていない。その腕が自分の腕ではないようにも、一瞬だけ見えた。

「え!?治ってる……」

なんだか、魔法でもかけられたみたい。驚きのあまり、三人そろって顔を見合わせる。それを見た紡さんと仁菜は嬉しそうに微笑みを浮かべていた。


「胡桃、未練解消ありがとう。約束、守ってくれたんだね」
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