夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
瞳からこぼれた涙の雫が頬を伝っていく。
「ほらあなたもなにか、言いなさいよ」
黙っている父さんを急かすように母さんは言う。小さく頷いた父さんは顔を俯かせたまま口を開いた。
「父さんも漁師の友に頼まれて今回は行ったんだけどな、狙いの深海魚は思いの外すぐ採れてしまって、あとはせっかく来たからと観光してました。すみません」
「へ?そんなの聞いてないわよ。相変わらず嘘つきね」
言い訳をする父さんに頬をふくらませて怒る母さん。なんだか見ていると涙より、笑いの方が堪えきれなくなった。
その笑い声を聞いた母さん達は顔を見合わせて、不思議そうにしている。
「あ、ごめん。変わんないなと思って」
一度笑い出したら止まらなくて声が病室中に響く。幸い同じ部屋に他の患者はいなかったので、迷惑にはならずに済んだ。
「その調子なら退院も早くなりそうね。母さん、看護師さん呼んでくるわ」
クスリと笑って母さんは病室を出ていこうとする。けれどさっきから聞いておきたいことが心の中にはあった。
「待って。その救急車呼んでくれた高校生って誰?」
立ち止まった母さんは一瞬首を傾げてから、やがて思い出したように手をパンとたたいた。
「東山……そうそう。あのメガネ屋の孫。たしか、椿君だったかしら?」
「ほらあなたもなにか、言いなさいよ」
黙っている父さんを急かすように母さんは言う。小さく頷いた父さんは顔を俯かせたまま口を開いた。
「父さんも漁師の友に頼まれて今回は行ったんだけどな、狙いの深海魚は思いの外すぐ採れてしまって、あとはせっかく来たからと観光してました。すみません」
「へ?そんなの聞いてないわよ。相変わらず嘘つきね」
言い訳をする父さんに頬をふくらませて怒る母さん。なんだか見ていると涙より、笑いの方が堪えきれなくなった。
その笑い声を聞いた母さん達は顔を見合わせて、不思議そうにしている。
「あ、ごめん。変わんないなと思って」
一度笑い出したら止まらなくて声が病室中に響く。幸い同じ部屋に他の患者はいなかったので、迷惑にはならずに済んだ。
「その調子なら退院も早くなりそうね。母さん、看護師さん呼んでくるわ」
クスリと笑って母さんは病室を出ていこうとする。けれどさっきから聞いておきたいことが心の中にはあった。
「待って。その救急車呼んでくれた高校生って誰?」
立ち止まった母さんは一瞬首を傾げてから、やがて思い出したように手をパンとたたいた。
「東山……そうそう。あのメガネ屋の孫。たしか、椿君だったかしら?」