夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
そう呟くと彼は驚いたように凝視し、それから嬉しそうな笑みを浮かべた。

「覚えててくれたんだな。17日も眠ってたくせに」

穏やかな口調で彼は言い、私のボブの髪をくしゃくしゃにしてくる。その瞳には涙の雫が浮かんでいたのを見逃せずにいた。

「くすぐったいよー」

「お前、ほんと泣き虫だな」

いたずらっぽく彼は笑う。

慌てて瞳に小指を当ててみると、そこにも涙の雫があった。

なんでだろう。わからないけれど、悲しい涙ではないような気がした。

「俺、東山椿」

涙に戸惑う私を置いて彼・椿は自己紹介をしてくる。

「知ってる。私は西園胡桃」

「そうだったな。っていうか、眠ってるうちになんかあった?」

なんか変だぞ、と言いたげな口調。

眠りに落ちていた時、私はどこにいたのだろう。

思えば病院にいた頃、ずっとそのことを考えていた。

もしかして誰かに生き返らされたんじゃないか、なんてそんな非現実的なことあるわけがない。

「なんにもないよ。それより椿は何を願ったの?」
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