夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
私は気合いを入れるように両頬を叩いた。椿は急にどうしたと驚いている。

「よし!明日は行くよ。学校」

「そうか。良かった」

そう言った椿の表情はひどく切なげだった。まるで何かの悲しみを抱えているかのよう。

何だか嫌な予感がする。明日は学校に行ったらいけないような気がする。良からぬことに気づいてしまいそうなそんな予感。だけどそれを確かめるために行かなければいけない。もしかしたら仁菜がいじめられていた理由と関係しているのかもしれないから。

胸にそう、決意を抱きながらまたなと帰っていく椿を見送った。


翌朝、急にざっと強く降りだした雨の音で私は目を覚ました。

何時だろうとあくびをしながらスマホの電源を入れる。

六時だ。まだ起きるには早い時間なので最近は確認もしていなかったメッセージアプリを開く。二日前の母からのメッセージが一件きていた。

『今日は病気を抱えている男の子を治療したの。病院が少ないからボランティアが来てくれて良かったってその両親が言ってたわ』

お人好しな母は今、海外で看護師の出張ボランティアに行っている。そこは田舎ということで病院が少なく、なかなか行けずに亡くなってしまうという子供達がたくさんいて、見て見ぬふりができない状況なんだそう。
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