夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
私はそんな母のことをうらやましいと思う。私なんか困っている人がいてもすぐに助けにいけれないからだ。あの仁菜の時のように。

今日は学校に行かなければいけない。先生も心配してくれてるだろうし、椿にも迷惑をかけたくないからだ。それに最近、椿の優しさからも仁菜の自殺からも感じている違和感の正体をこの目で確かめたいからだ。

大切な存在を助けれなかった後悔で、なんキロもの重りを背負っているかのように、重たくなった体をため息を吐きながら起こす。それから気合いを入れるようにピンク色のメガネをかけた。

確かに恐怖はある。なんせいざというときになるまで気づけなかったんだ。私は鈍感なのかもしれない。それがどうであれ、衝撃の事態になるとは思う。

階段をおりてリビングに行き、手始めにポットにお湯を沸かす。最近は食事の味も感じなくて料理も気がのらず、カップラーメンばかりになっている。今日の昼食もお弁当ではなく、コンビニで適当に買ってきた菓子パンだ。

こんな食生活を続けるのは体に悪いとわかってはいるけれど、今の私の現状からしたら仕方ないことだ。

お湯が沸いたらカップラーメンの中に注いで三分待つ。それだけでできるこの非常食はめんどくさがりな人には便利なものである。

数日前の私なら毎日のように料理を作っていた。親が共働きの影響で小三から教えてもらっていた。最初は簡単なサラダや酢の物を作っていた。初心者だからかもちろん、野菜を切る手つきは慣れていなく、きゅうり一本切るのに三分もかけてしまっていた。だがそれは嘘のように一ヶ月後には、一分もしないうちに切り終わるまで上達した。そのときは前はあんなだったのにねと母から年寄りくさく褒められた覚えがある。
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