夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
椿はそこまで言って一瞬黙る。それから息を吸ってからこう言った。

「なかなか会えないならその分大切にしろよ。未来で後悔することになるからな」

助言をするように力強く椿は言った。

私はぼんやりとしている頭の中でクエスチョンマークを浮かべる。

それはこの時の私とって訳もわからない言葉だった。


その日の授業は五日も休んでいたせいか、内容がまともに受け取れなかった。一応、ノートに板書はしてあるけれど、授業をすればするほど頭がごちゃごちゃになってしまい、ぽかーんと無の状態になったこともあった。

そして気づけば三時間目も終わりを告げた。それと同時に教室は動物園のように騒がしくなる。

私はその中で一人、空気のようにぽつんと存在していた。友達を失ってしまったのだから孤立しているのも当然だ。とはいえ、入学当時からクラスが違ったせいで、話すのも少なくなったので、ひとりぼっちという状況に慣れてしまっていた。

私は残りの高校生活をたった一人で過ごしきれるのだろうか。考えただけで気が重くなった。

騒然となる教室の中で私は静かにお気に入りの本を開いた。

本とは素晴らしいものだ。表紙を開いた瞬間、違う世界に迷いこんだような錯覚に陥る。物語を追う時間はぎこちない現実も息苦しさもなく、私にとって安らげる時間であった。
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