夢の終わり、交わした約束を胸に~紡~
脳内に仁菜の自殺シーンがフラッシュバックしてくる。そこから救えなかったこと、いじめられていたことに気づけなかったことへの罪悪感が蘇ってくる。

「まずは謝らせて」

私がそう言うと仁菜はきょとんとした顔をこちらに向けた。それから私はすうっと一つ息を吸うと「ごめん!」と顔の前で両手を合わせて謝った。

「気づかなくて助けれなくて本当にごめん。約束したのに」

私は仁菜の友達失格だと思いながらその言葉を発した。それを聞いてしばらく沈黙したあと、仁菜は思い出したようにパンと手を叩いた。

「あのことね。大丈夫。胡桃はなんも悪くないから。自分を責めないで」

穏やかな口調で彼女は言った。その時の表情は寂しい笑みでそれがひどく切なげに見えてしまう。そのせいでなにも言い出せなくなってしまった。

「私の方こそ頼れなくてごめん。思い出すと辛くなってしまって」

こういうときは慰めてあげるのが合理的だろう。だけど口がいうことを聞いてくれない。心配そうな目で見つめることしかできない。そんなことしかやってあげられない自分を情けなく思った。

「誰にいじめられたの?」

やっとのことで絞り出した声で私は問いかけた。

「それは……言えない。理由も知らないの。ただ物は盗まれて心も体もボロボロにされたわ。本当、ひどいやつ」
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